狭心症とはどんな病気?
心臓には、心臓の筋肉(心筋)を栄養するため、心臓を冠の様に覆う動脈が3本存在します。
そのため、それらの動脈は冠動脈と呼ばれます。
狭心症は、この冠動脈が動脈硬化により狭くなり、血液が流れにくくなった結果、心筋に十分な酸素や栄養が一時的に届かなくなってしまった病気です。冠動脈は3本存在しますが、狭くなった場所が多いほど重篤となります。
初期症状はほとんどないか軽いものが多いですが、冠動脈の内腔が75%程度まで詰まると症状が現れるとされています。典型的な症状は、労作時の胸痛や胸部不快感と表現されます。
ただし、肩が痛くなる場合、奥歯に違和感がある場合など症状は多岐にいたります。症状は、階段や坂道を上る時・運動をした時・家事をしている時など、心臓に負荷がかかる時に出現します。安静にすると症状が改善するのも重要な特徴となります。症状は数分程度と一時的なことが多いですが、症状が進行すると長引くこともあります。
場合により、血管が塞がって血流が途絶える「心筋梗塞」に移行することもあり、早期発見・早期治療が重要となります。
動脈硬化の危険因子には、高血圧症・糖尿病・脂質異常症・喫煙・家族歴などがあります。これらの危険因子を複数有され、労作時に胸部症状を認める場合は、すぐに医療機関受診が必要です。
前兆はある?
狭心症の症状チェック
狭心症は症状がない場合も多く、症状が現れても安静にしていると数分程度で消えてしまいます。
特に糖尿病と診断されている方では、神経障害を起こしていると症状を感じにくいことがあるため、以下のような症状に心あたりがある場合には注意が必要です。
- 胸が締めつけられる・押さえつけられるような痛み
- 息切れ、動悸
- 冷や汗
- 放散痛(歯、あご、左手・腕・肩の痛み)
- めまい
など
もし現時点で感じなかったとしても、これらの症状を経験したことがあれば狭心症の可能性があります。
狭心症になりやすい人の
特徴
狭心症は、以下に当てはまる場合は発症リスクが高まると言われています。
- メタボリックシンドローム・肥満
- 高血圧症
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 喫煙
- 家族歴
- ストレス
- 男性50歳以上、女性60歳以上
など
狭心症の3つの種類
狭心症は、その病態から以下の3種類に分けられています。
安定狭心症
階段や坂道を上る時・運動をした時・家事をしている時・重いものを持った時など、心臓に負荷がかかる時に症状が起こるもので、労作性狭心症とも呼ばれます。
心臓に負荷がかかる際に、体内に多くの血液を送り出すために心筋がたくさん動きますが、細くなった冠動脈では十分な量の血液を心筋に届けられません。そのため押さえつけられるような胸の痛みなどの症状が起こります。
身体に負荷がかかった時に、再現性をもって発症することが多いです。
不安定狭心症
冠動脈がかなり狭くなると、より簡単な労作(体への負荷)で発作の回数が増えたり、痛みが増強したり、症状改善に時間がかかったりします。心筋梗塞の前段階の状態です。
一定だった発作の症状に変化が現れた場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。安静時でも痛みがある、痛みの時間が長くなると感じた場合はすぐに受診しましょう。
冠攣縮性狭心症(異型狭心症)
夜間の就寝時、特に明け方に胸が苦しくなる発作が起こります。
精神的なストレスでも発作が起きることがあります。冠動脈が一時的に痙攣して収縮する「攣縮(れんしゅく)」によるもので、攣縮の結果血流が一時的に減少もしくは途絶えてしまうことで起こる発作です。
動脈硬化がそれほど進行していなくても起こることがあります。
狭心症の原因
狭心症の主な原因は、動脈硬化です。
動脈硬化が起こった血管では、冠動脈の壁にコレステロールなどが沈着してプラークと呼ばれるこぶのようなものが形成され、内腔が狭くなってしまいます。
その結果血流が妨げられるのが狭心症、プラークが破れてしまうことで血栓ができ完全に血管を塞いでしまったりするのが心筋梗塞です。
動脈硬化を引き起こす流れ
冠動脈にプラークが形成され、動脈硬化が進展する過程は以下のようになっています。
生活習慣病
血管壁のプラークは加齢によっても自然に形成されますが、高血圧症・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病や喫煙が血管を障害することで、プラークの形成が加速されます。
動脈硬化の進展
様々な危険因子により血管内皮は障害され、血管壁にコレステロールが沈着、プラークが形成され、動脈硬化は進展します。プラークにより血管の内腔が狭くなると狭心症が発症します。ある程度プラークが進展したタイミングでさらなる障害がおこると、プラークは破綻し血栓が形成されます。血栓により血管が閉塞してしまうと心筋梗塞が発症します。
胸が痛い…病院に行く
タイミングとは?
普段問題なく行えていた運動で、胸の痛みや締め付け感といった症状が現れたら、重篤な状態になる前に、速やかに循環器内科を受診しましょう。突然の胸痛や圧迫感などの症状が数分で治まっても、決して自己判断で放置しないようにしてください。心筋梗塞や、あるいは他の病気の可能性もあるためです。冷や汗や吐き気、意識障害、めまいなどを伴う場合、持続時間が長い場合、安静時にも症状がある場合、は特に緊急性が高いと考えられます。
狭心症の検査
心電図
心臓の電気的な動きを記録する基本的な検査です。
狭心症の場合は、症状がある時の心電図が有用です。症状が消失している場合は、確定診断ができないことがほとんどです。
心筋梗塞に至っている場合は、心電図にて確定診断ができることがほとんどです。
負荷心電図
運動して心臓に負荷をかけた状態で心電図を記録して異常がないか検査します。安静時は症状がないのに、運動などで身体を動かすと胸痛が起こる労作性狭心症の診断に有用です。
自転車のような装置(エルゴメーター)を漕いだ状態で心電図を記録します。
24時間ホルター心電図
症状が時々起こる場合、非典型的な場合、安静時の胸痛(冠攣縮性狭心症)の場合に、24時間心電図を記録して心電図の異常を調べます。
入院の必要はなく、小型の機械を1日装着すれば検査が可能です。不整脈や狭心症の診断に有用です。
胸部レントゲン検査
胸痛がある場合、心臓に原因があるかどうか鑑別するために実施することがあります。肺や肋骨などに痛みの原因がある可能性も否定できないためです。
また、心臓の大きさや肺鬱血の有無も評価できるため、心不全の診断に有用です。
冠動脈CT検査、心筋シンチ検査
造影剤を用いたCTによって冠動脈の状態を詳しく検査できるほか、大動脈や心臓、肺の状態も詳しくわかります。狭心症や心筋梗塞以外の胸痛の原因も発見可能です。
心筋シンチは核医学検査の一つで、心筋血流を評価することができます。それにより狭心症や心筋梗塞の診断が可能です。
いずれも病院での検査が必要ですので、当院より検査予約の手配をいたします。
心臓超音波検査
身体の表面から心臓に超音波を当て、心臓の動きや形などの状態を調べます。心臓の動きの悪化や、心臓内の弁の異常を評価します。
当院にて検査可能です。
血液検査
血液検査にて心筋逸脱酵素を測定することがあります。不安定狭心症や急性心筋梗塞といった急性冠症候群の診断に有用です。
また、生活習慣病のスクリーニングのため血糖値や脂質なども調べます。
糖尿病や脂質異常症などは、狭心症や心筋梗塞のリスクとなる動脈硬化を引き起こしやすいためです。
冠動脈造影検査
狭心症や心筋梗塞の最終診断・治療のために行います。どの冠動脈のどの部分に病変があるか診断し、治療するための検査です。カテーテルを用いて造影剤を冠動脈に注入し、レントゲン撮影を行います。
病院受診が必要ですので、当院より受診予約の手配をいたします。
狭心症の治療
狭心症の治療は、症状に合わせて以下のような方法で行います。
薬物療法
病態や症状に応じて様々な薬剤を選択します(抗血小板薬、カルシウム拮抗薬、硝酸薬、β遮断薬など)。
動脈硬化危険因子(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)に対しても薬物療法を行います。
手術
薬物治療に加えて、侵襲的治療が必要になることがあります。
カテーテル・インターベンション
手首や脚の付け根からカテーテルを挿入し、冠動脈の病変部(狭くなっている部位)をバルーンで拡張したり、ステントを留置します。技術向上により、複雑な病変もカテーテルで治療可能になってきました。
冠動脈バイパス手術(CABG)
外科的な手術になります。冠動脈の病変部(狭くなっている部位)を避けるようにして血管を繋ぎ、新しい経路を設置します。